書物が人を躍らせる

 このシリーズは作者の他の作品とは少し毛色が違うのだけれど、相変わらず面白い。今回は近現代史の歴史的事実を下敷きにして、書物狩人<ル・シャスール>の仕事を描いている。近現代史なので、現在進行中の歴史もあれば、第二次世界大戦にまつわる歴史もある。
 世界中のアメリカ海軍基地に爆破テロを仕掛けるテロリストの犯行動機とミッドウェイで起こった人間以外の悲劇や、40年前にアメリカ空軍戦略航空軍団が引き起こした事故とポオの研究書との関係など、どこまでが事実でどこからが虚構なのか迷ってしまうほどだ。

 ル・シャスールは暴力行為に長けていないと言うわけではないけれど、書物に携わる人間らしくと言うべきか、直接的な暴力は用いず、事態は常に水面下で進行し、彼が相手と対するときには、全ての解決が用意されている。
 今回、書物狩人に対立する謎の人物ミスター・クラウンが登場し、次巻以降で直接対決する舞台が整った。メフィスト連載作なので順次発表されていくだろうが、ボクとしてはノベルス化される時が楽しみだ。

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赤城毅作品の書評