講談社ノベルス

書物が人を躍らせる

このシリーズは作者の他の作品とは少し毛色が違うのだけれど、相変わらず面白い。今回は近現代史の歴史的事実を下敷きにして、書物狩人<ル・シャスール>の仕事を描いている。近現代史なので、現在進行中の歴史もあれば、第二次世界大戦にまつわる歴史もあ…

減らされても絶えないつながり

石凪萌太から依頼を受けていた哀川潤が、零崎人識と無桐伊織、闇口崩子を連れて闇口衆の拠点を襲撃する。まさに襲撃。その単純な襲撃に、色々と不確定な要素が組み込まれていって、なかなか予定通りには物事が進まない。 絶滅寸前に追い込まれている零崎に未…

戯言遣いの登場しない場面

八年前の京都連続通り魔事件を振り返るお話。「戯言遣いとの関係」となっているけれど、戯言遣いはあんまり出て来なくて、彼に関係している一般人と零崎人識の関係が語られる。 本編ではメーターを振り切ったようなキャラクターが多かったけれど、こちらでは…

根本的勘違いからはじまる

萩原子荻の策戦の一環として、零崎双識に"呪い名"六名で構成される裏切同盟が差し向けられる。しかし、実際に狙われるのは見た目も全く似ていない零崎人識だった。口先では双識を毛嫌いしながらも、彼を守るために刺客を引き受けることになる。"殺し名"とは…

彼らの間のみで成立する幸せのカタチ

4冊同時刊行だとどこから手をつければ良いか迷うが、素直な気持ちで発生時系列順に読むことにする。あとがきによるとどれもが最終巻らしいが…。 これは零崎人識が未だ汀目俊希を名乗っていた時期のこと。彼が在籍する中学校に匂宮出夢が訪れ、玖渚直暗殺の仕…

人の本質は声に現れてしまう

トリックよりも、探偵と助手のやりとり、共感覚という特殊能力を軸に置いた構成などに主眼が置かれている感じがする。共感覚とは、五感のうち一つの刺激を受けることによって、他の感覚も刺激される特性のこと。この作品の探偵である音宮美夜は、音に色や形…

弱さを支える心の柱

久瀬冬弥は、自殺した同級生内田未歩の葬儀の席上で、赤髪碧眼の少女藤宮優々希に呼び止められる。未歩の親友だった優々希は、自殺の原因が冬弥にふられたことにあると思い込み、詰問するために呼び止めたのだった。 冬弥の話を聞き思い込みが誤解だと理解し…