数の集め方の違い

 ストーリーについてはあえて触れまいと思う。何を書いても読む前に知るのはもったいない気がするし、ここまで読んだ人ならば続きを読まずにはいられないだろうから。ただ、何も書かないのはさびしいので、ずらしたところで少しだけ書かせていただきたい。

 この作品は強い個体と個体のぶつかり合いという側面が現れるのだけれど、実はその裏には、集団対集団という側面があるような気がする。
 例えば、エドたちが対するホムンクルスは、人外の力をふるう強力な個体だけれど、その力の源は賢者の石であって、その石を構成しているのは、無理やり奪われた膨大な数の人たちの命なわけだ。等価交換という原則の下、彼らの命をすり潰しながら、ホムンクルスは自分たちの目的を達成しようとする。
 一方、エドたちは、自分以上の力を振るおうとして反動を受け、また一からやり直している人たちだ。彼らは、もちろん自分自身も鍛えているけれど、無理やり奪った命を使う代わりに、時間や空間を超え、信頼や友情でつながった仲間の力を使い、目的を達成しようとする。
 等価交換の原則に従うならば、単に多くを集めさえすれば勝ちのはずなんだけれど、その集め方に大きな違いが現れ、結果も左右するのではないだろうか。

 バラバラに散らばっていた人々がセントラルに集結する。そうすると、これまで別格の力をふるっていた人が一緒になったりして、パワーバランスが崩れてしまいそうになる。そこを崩さないように、上手く物語を回さなければいけないからかは分からないけれど、何ヶ所かキツイ感じになってるのがつらい。

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荒川弘作品の書評