反転する真実

 穂吹武臣の中学時代の友人である秋永貴也が不審な状況で不登校になっていることを知り、様子を見るべく彼の自宅を訪問した遥海慧たち。そこで出会った秋永貴也は、半年の記憶を欠落させていた。阿部真理亜の情報から、1年以内の記憶を消失させるクロノグラフメメントがかかわっている可能性が高いと判断した慧たちは調査を開始する。
 本人の記憶がない中で調査は困難を極めると思われたが、秋永の彼女である羽澤明里の証言を得ることができ、3人の怪しい人物を突き止めることができた。彼らのうち、誰がメメントを所有しているのか、そして、何のためにメメントを使用したのか?

 夕凪が情報を収集することで丹念に証言を積み重ね、推理を展開してメメントの所有者の下までたどり着くが、そこで当初の動機がくるりと反転し、得られた事実からは意外な真相が明らかになる。
 初めのほうに出てくる少しの言葉遣いが、最後で真相を暴くキーになるところが緻密にできている。天使の道具よりも、人間の精神の方がよほど恐ろしいという印象を受けた。

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久住四季作品の書評