組み合わせは変わってもピースの接点は変わらない

 最終話まで読み終わってみると、第一話でほとんど全てが語られていたんだな、と思う。ただ、同じ様な出来事でも、それを捉える側の心理が変われば見え方が変わってくる。
 周囲の出来事が変わるようでいて、結局のところ自分の変わるべきところが変わるまでの過程として必要なのが、二話と三話の試行錯誤なのだろう。

 一回生の時の選択肢の違いによって引き起こされる、三回生のときの出来事の変化が延々と繰り返されるだけなのだけれど、そこには変わらないターニングポイントがいくつかある。そして最終話に至って、それらの関係性が明らかにされるわけだ。
 いずれの話にせよ、訪れる結末は大概の人にとっては十分幸せだと思うのだが、本人は不満が残るらしい。なんて贅沢なんだ。

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森見登美彦作品の書評