権力が作る正義の姿

 幻の蝶と20世紀のアルゼンチンの闇をつなぐ「ワールド・エンド」、日常の行き違いの原因を探る「すごろく」、司法浪人生が覗く愛憎劇「花屋の娘」を収録。2本目、3本目はどちらかというとQ.E.D.で扱いそうなテーマという気もするので、1本目が個人的には好き。

 世界に八頭しかない幻の蝶"ポンテンモンキチョウ"の9頭目の写真を辿り訪れたアルゼンチンで、森羅たちは1976年の汚い戦争で行われた軍事政権による民衆弾圧の後遺症に巻き込まれていく。
 法は権力を縛るのが理想だと思うけれど、権力による暴力を正当化することだってできる。そしてそういう時代が生み出す異常な状況は、普通の人を怪物にしてしまう。
 エンディングにあるのは勧善懲悪ではなく、権力が作る正義の姿。

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加藤元浩作品の書評