現代風の怪人物

 怪人二重面相が活躍していそうな世界観。
 ほとんど無能な呪い師である病葉久郎は、オカルトによる帝都防衛を担う鬼灯機関の司令である桜下屍人の下僕としてこき使われていた。彼の狙いは、久郎の妹であり病葉呪術最高の使い手である夕日をして事件解決に充たらしめること。

 しかし、この妹は兄は大好きだが他の人間は嫌いで常に暴走して被害を大きくしてしまうという欠点も持っている。いかに彼女を上手くコントロールできるかが久郎の腕の見せ所。
 今回彼らが対峙するのは、帝都を騒がす怪人三日月卿。「絶対言語」という言葉を現実に変える力を操る怪盗だ。
 甘いものに目がない魔女や理不尽な上司など、一筋縄ではいかない人間に囲まれる中で、久郎に活躍の余地はあるのか?

 ほとんど遊び心とネタで構成しているようでありながら、少し心の闇のようなものにも触れたりする。絶対無敵のようでありながら、その力では本当に望むものは手に入れられない。ドタバタ喜劇でありながら、どこか病んでもいる。
 役者の配置はできているので同様のパターンで続巻は出そう。でも、最終的にどこに着地するのかはまだ見えない。

   bk1

   
   amazon

   

大谷久の書評