緩急を織り交ぜたストーリー

 15年前、太平洋上に出現したゲートにより、地球とレト・セマーニと呼ばれる異世界は結ばれた。レト・セマーニの文明は地球よりも数世紀遅れたものであり、その制圧は容易と思われたが、彼らは地球にはない術による魔法効果で兵器を強化し、若い文明らしい生命力によって対抗することで勢力は拮抗した。
 紆余曲折を経て外交関係が成立した現在、ゲートと同時に現れたカリアエナ島では、セマーニ世界の魔法製品と地球世界の科学製品が取引され、犯罪が渦巻く混沌とした状況が作り出されている。

 そんな島のサンテレサ市の刑事であるケイ・マトバは、セマーニ世界の大国であるファルバーニ王国からうら若き乙女の姿をした準騎士ティラナ・エクセディリカを迎え入れる命令を受ける。彼女はセマーニから地球に連れて来られた妖精を救出するため派遣されてきたのだ。
 元軍人で生粋の現場刑事であるケイは外交官のまねごとで少女のお守をさせられることにいらだち、ティラナは自分を子供扱いし無礼な態度を取るケイに反発するのだが、互いの目的を達成するため、仕方なく協力しあう。
 スラムの様な場所での違法すれすれの捜査、銃撃戦に剣戟戦や魔法戦、あるいは猫との穏やかな日常など、次から次へと様々な事態が引き起こされていく。その事件の中で少しずつ信頼関係をはぐくんでいく二人、そして明らかにされる事件の真実とは。

 初めの噛み合わない感じから、徐々にかっちりと噛み合っていくまでのステップが、きっちり踏まれている。その過程には緩急が織り交ぜられていて飽きさせない。それぞれの立ち位置が明確なので、それが近づいたり離れたりしても、ブレた感じがしないのだ。
 今回の事件でコンビとしての二人は成立した。あとはこれから二人の事件が始まって行く。

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賀東招二作品の書評