不器用な生き方

 全国から優秀な学生を集めた学園都市の高校に入学した鮎見勇は、中学時代にサイドキックというロボット競技の大会で敗北し、心機一転、高校デビューを目指す。しかし、その高校で出会った知能科学の天才桐生静華と賭けをすることになり、結果として、サイドキックのチームを結成することになる。
 ある大会で優秀な技術を見せつけられたメカニックの平賀寿を仲間に引き入れ、マネージャー役の関谷雪音と共に大会を目指すことになるのだが、それぞれが個性的で方向性が違うメンバーはなかなか息が合わず、チームワークなど夢のまた夢の状態だ。果たして彼らは一つになれるのか。

 1位を目指して努力したけれど4位にしかなれず、普通の人が努力しても天才には届かない、という負け犬根性に染まった勇が、静華に発破をかけられてもう一度、1位を目指そうと立ち上がるのだが、色々と気を散らす要因がありすぎて、まっすぐ立ちあがることができなかったりする。…なんか心に突き刺さるものがあって、泣けそう。
 ロボット競技ものだけれど、作り上げるまでの過程を描くことがメインになっているので、大会自体は比較的あっさりしたもの。男女4人集まれば恋愛物語が生まれるものだけれど、これまでの内容から想像がつくように、こちらもシンプルな結論は生まれない。

 ロボットでも恋でも迷走し、必ずしもハッピーな展開ではないけれど、普通の人の上を目指す努力が天才を捕まえることが出来るか、切なる想いを感じつつ、楽しみではある。
 でも、せめて物語でくらいは都合のよい展開を見たいとも思うなあ。

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木本雅彦作品の書評