3人の擬似家族と1人の血族

 リニエッジ機関の仕掛けを切り抜けて、あすみも含めた3人の団欒が定着してきた耕介と咲耶の生活。だが、沖島教授から時詠みの追難の計画が継続していることを告げられる。
 同じ頃、咲耶と夢の中で会っている磐長媛も、咲耶が時詠みの追難を実行することを願っているらしく、リニエッジ機関の計画に協力する姿勢を見せる。
 集められる情報から耕介が感じる違和感と、名探偵須崎が依頼を受けた事件との関係。耕介が沖島教授と磐長媛の真意に気づいた時、事件の真相が明らかになる。

 前巻に比べると、話せば必ず説明口調になってしまう耕介に代わってあすみが日常パートのイニシアティブを取るようになり、咲耶の少女らしさも出てくることによって、地の文とセリフとの間にメリハリが利くようになってきた気がする。これにより、セリフ多用による掛け合いだけでなく、作中に通底する部分が生まれたと思う。
 もう一つの変化点として、キャラクターの記号性を強調するようになった。要は咲耶に色々と付属品をつけようという事なのだが、もしこの方向で行くつもりならば、文中イラストの選び方ももっとあざとくした方が整合性が取れるだろう。しかしこれをやると作品の雰囲気は崩れる気がするので、あまりこの方向を狙わない方が良いと個人的には思った。

 作中で、計算式は万能ではない、という言葉が多用されているが、計算式は想定されている範囲では常に正しい。これが誤った答えを導くのは、そもそもの前提が間違っている場合や、各種条件の見落としがされている場合だ。
 計算式が計算式として成立している限り正しいという前提がなければ、物理法則を数式に落とすことなどできない。自らの拠って立つ基盤を否定する物理屋などいないと思う。

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内堀優一作品の書評