対等な関係と役割分担

 武原郷事件の影響により大学で実戦訓練が行えなくなった守屋篤志は、害獣駆除のボランティアに参加して実戦勘を鈍らせないようにしようとする。その噂を聞いた神崎栞も一緒にボランティアに参加することになる。
 彼ら二人も含めて6人で構成されるチームメンバーは、一癖も二癖もありそうな人物ばかり。特に、同年代で同じ採取者志望の蓮堂貞教は、何故か篤志と栞を敵視してくる。

 大過なく終了するはずの作業だったが、近隣研究施設による通信妨害と接近する台風の影響により、孤立する彼らのチームは、救助を求めてその施設に向かう。ところがその施設は厳戒態勢が敷かれていて、彼らは銃をもって追われることとなる。
 バラバラになる篤志と栞。集団戦により追い詰めてくる敵に対して、チーム未満の彼らは生き残ることができるのか。そして、研究施設に隠された秘密とは?

 KIワクチンにより一応の安全を手に入れた研究者は、かつては恐怖の対象だったTDHに対して好奇心をむき出しにする。そして一部の研究者たちは、組織という精神的な鎧をまとって、好奇心の赴くままに、倫理という鎖を引きちぎってしまう。さらには手を汚さずしてその利益のみを掠め取ろうという人々。
 物語でよく語られる構造といえばその通りだが、世界観に対する細かい設定が色々となされていて、個人的には好み。

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白川敏行作品の書評