絶えず書き換えられていく世界

 クリスマスを間近に控えた頃、うだるような暑さの中で、仲西景はアメリカの空想病研究所長メアリー・ポートマン(11歳)と出会い、子ども扱いすることで激怒させてしまう。
 穂高結衣へのクリスマスプレゼントを選びに青井晴と表参道に出かけたり、ネットを通じて遊んでいる結衣と今井心音の間にみんなで乱入したりして、普通の生活を楽しんでいた。そんなとき、景は一冊の本を結衣から手渡される。そのラノベのタイトルは「空色パンデミック」。そこから景の迷走が始まる。一体、本当の空想病患者は誰なのか?

 冒頭で発作が継続していることは早々に明らかにされるわけだが、そこからの展開が、あっちへ行ったり、こっちへ行ったりして、何が本当なのかが分からなくなってくる。転々と変わる景にとっての真実は、果たして世界の真実なのか。
 読者にとっての真実もそう。ある時点まではこれが真実なのかと思っていても、ページをめくればそれは脆くも崩れ去って、また新たな真実が展開される。世界の矛盾を見つけたと思っても、それはあっさりと別の論理によって覆される。結局最後まで読み終わってみても、何だかまだ不安定な気がする。

 人によってはバカバカしい展開の連続かも知れないし、真面目に読んでいる人はバカにされたような気分になるかも知れない。でもこれは物語だし、読んでいるそのときに読者が楽しめるならば、それで良いのではないかと思うのだ。

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本田誠作品の書評