届かぬ想いの果てに

 平安時代円融天皇の御代。安倍晴明源頼光と四天王なども登場する。そんな彼らに庇護されている坂上鈴城と源頼親は、鈴城の従妹、結鹿に着せられた汚名を晴らすため、都に出没する姫殺しという妖を退治しようとする。結鹿は鈴鹿御前の血を色濃く引いており、鬼姫とも呼ばれる力を持っているのだ。
 一度は姫殺しの水蜘蛛を見つけたものの、その力に圧倒され破れた3人は探索の一線から外れる。しかし、とある縁が結ばれ、再び姫殺しとまみえることになるのだった。そして、姫殺しに隠された許されざる愛の物語を知る。

 この物語で登場する人物たちは、代々続く神の力を引いていたり、鬼や霊狐、水神などと人が交わった結果として生まれた人たちであることが多い。本来なら交わることのないものたちが友好的に交わった結果でもある。
 しかし全てが円満に終わる想いばかりではない。相手に伝わらないこともあれば、伝わったとしても受け入れられないこともある。そこで行き場をなくした想いはどうすれば良いのか。姫殺しのものたちは、その無理を押し通そうとしてしまったものたちでもあろう。

 主人公格は少年少女たちなのだけれど、その保護者的立ち位置の青年たちが多く、どこか妖艶で幽かに耽美な雰囲気のある物語という気がする。数多く登場する保護者たちの特徴や役割分担が描き分けられればもっと良いと思う。
 個人的にこういうお話は好きなので、ぜひ続編を出して欲しい。

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黒狐尾花作品の書評