羽川翼の再生物語

 阿良々木暦が不在の中、羽川翼は新たな怪異に出会う。それは巨大な虎の怪異だった。そこから起きる不審な火災。戦場ヶ原ひたぎや、阿良々木月火・火燐の助けを借りつつ、羽川が到る事態の真相とは?

 物語の語り部羽川翼であり、かつ、全く新しい怪異事件が描かれており、猫物語黒との直接的なつながりは全くない。暦視点では立派な人物として描かれる羽川の内面を語りきった作品といえると思う。
 前作で明らかになった羽川家の実態と、それを何でも無いことの様に振舞っている羽川の異常性を、ひたぎが改めて突きつけることから、これまでは見ないで来た現実に羽川自身が気づくことになる。

 暦がほとんど登場しないので、いつものような変体性はほとんどない。しかし、羽川翼という存在が、普通の人間として再生する様が徹底的に描かれる。そして彼女は、これまでには出来なかったことが出来るようになるのだ。

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西尾維新作品の書評