菜々子さんのいる学校

 新入生の宮本剛太は、文芸部部長の月ヶ瀬に嵌められそうになっているところを、偶然に出会った菜々子先輩に助けられる。成り行き上、菜々子先輩の所属する映画研究会に入ることになった宮本は、菜々子先輩の本性に気づきながらも、彼女の期待に応えようと振り回されることになる。
 そして彼らの脇を彩るのは、前作にも登場した菜々子さんの親友である片寄久美子や、映研のメンバーである、水落橋祥子、二条真一郎、天坂舞たちだ。

 前作は菜々子さんとぼくの対話がほとんどだったが、本作はアプローチをガラリと変えて、菜々子さんの通う高校が事件の舞台となる。このため、前作の主人公の一人であるぼくは手紙の中にしか登場しない。
 しかし、前作と共通するのは、全編を通じて張り巡らされる菜々子さんの思惑である。偶然と必然を織り交ぜながら、そして小さな事件をいくつも積み重ねて宮本を翻弄しながら、最終目的へ向かって道筋を作り上げていく。
 約一ヶ月間に渡って宮坂が遭遇する様々な出来事を章ごとに描きながら、一見関係無い様なそれぞれの出来事を通じて知った事実が最後につながりだす。前作よりもパズルなどミステリー要素が多めになっているが、一部の情報は読者に隠されているので、完全なミステリーというわけではない。

 前作で作り上げた菜々子さんというキャラクターを十分に利用しつつ、宮本というアクティブな探偵役を加えたことにより、馴染みやすい物語になっていると思います。事件は結構卑劣ですけど。

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高木敦史作品の書評