目指すべき先を探して

 FBonline掲載の短編3本と書き下ろし2本が掲載されており、後者のうち1本は本編完結後のエピソードになっている。
 大晦日から元旦にかけての初詣を兼ねた千段の参道レースを描く「年越しの階段」、三島真琴視点でバレンタインのエピソードを描く「恋愛とチョコレート」、御神楽あやめ視点で同じ出来事を描く「チョコレートと恋愛」、九重ゆう子・刈屋健吾・遊佐由宇一・中村ちづる四人の関係を描く「エンドレスフォー」、そして、新しい年度になり新入生を迎えた天栗浜高校で、井筒研の妹の井筒奈美と神庭幸宏の出会いと再スタートを描く「予兆」を収録している。

 真ん中の三篇は、サブキャラ視点で本編の時系列の中の物語を描きなおしているので、これまでとは違った人間関係の印象を抱くかも知れない。また、最後の一編は、まさに新しい物語のスタートという感じに仕上がっていて、目標を失って自暴自棄になりかけている井筒奈美に前を向かせるセリフを放つ神庭幸宏が格好よい。
 まだまだ今回触れられなかったキャラクターたちも大勢いるので、機会があれば彼らの事後談が描かれるのも面白いと思う。

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櫂末高彰作品の書評