他者から見る自分の姿は

 九尾の狐である清原凪が人間として通う海鳴場高校を、狐の嫁入りが通った。たまたま夜の学校にいた凪はそれに入り込んでしまい、結果として嫁入りの妨害をしてしまう。翌日、嫁入りを邪魔された七尾の子狐、橘が、凪のところに怒鳴り込んでくる。破談になり、一族からも追放された責任を取って、凪に娶れと橘は言う。
 普通の人間として暮らしたい凪はそれを一度は拒絶するのだが、恥を雪ぐために死を選ぶという橘を見て、とりあえず引き取ることになる。だが、凪が通っている高校は実は妖怪を保護する機関が運営していて、そこに所属する顔見知りの先輩、和泉恋と橘がトラブルになったり、新たに転校して来る天狗、藤紫との対立が起こったりして、人間?関係はギクシャク。しかも、人間としての凪のクラスメイトの委員長、赤染は、いつものように高飛車に凪を引きずり回すし…。
 妖怪と人間の共存というバックボーンのもとに繰り広げられるラブコメです。

 最強に近い力を持ちながらも、あえて人間としての生き方を選択している凪に対し、彼の生き方を尊重する人間や、何も知らずに仲良くする人間、妖怪としての生き方を取り戻させようとする妖怪など、それぞれの立場に基づいて干渉がなされる。
 そんな環境にあって、毎日を自分の望む様に生き、人間として人間と関わりながら、それでも人間として他者から見てもらえているのかという不安はなくならない。そんなときにやって来る過去のしがらみ。全てを諦めそうになる凪に対し、彼の周囲はどう動くのか?

 そういう存在に対する悩みも描きながら、ほとんどの場面ではラブコメが展開されていて、どちらの雰囲気がベースにあるのか少し迷ってしまう。上手いと思う部分もいっぱいあるのだが、個人的には内向きな物語の印象を受けていて、きちんと真っ直ぐ進んでいけるのかが少し不安です。

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冬木冬樹作品の書評