偶然から始まる非日常

 ノベライズ担当の名前が懐かしく購入したクチなので、元となったゲームとの関連性について言及できないことはご了承ください。

 鳳凰院凶真を自称するおかりんこと電機大学生の岡部倫太郎は、タイムマシンを開発したというドクター中鉢の記者会見に参加するため、秋葉原のラジオ館を訪れる。偶然一緒になった幼なじみで浅葱大学付属学園高校生の椎名まゆりと共に記者会見に参加し、ドクター中鉢の理論にいちゃもんをつけていたところ、一人の少女に会見場から連れ出される。その少女は、天才科学者として有名な牧瀬紅莉栖だった。
 ほどなく別れた彼らだが、岡部はすぐに紅莉栖と再会することになる。ただし、物言わぬ死体となった彼女に。だが、その惨劇を友人のダルこと橋田至にメールして知らせた直後、岡部は妙なめまいを感じ、気づけば、死んだはずの紅莉栖を元気な姿で発見するのだった。

 おかりんやまゆり、ダルの集まりである未来ガジェット研究所。かれらの8番目の発明品である、携帯電話と電子レンジを融合した電話レンジ(仮)の想定外の機能は、限定的なタイムトラベルを起こしているようだった。
 紅莉栖をラボメンバーとし、ネット上に現れた未来人、ジョン・タイターと議論をしていくうちに、電話レンジ(仮)は過去にメールを送れるということが明らかになっていく。

 既にブラックホールを生成し、タイムマシンの研究を行っているというCERNもといSERNの陰謀。IBM5100ではなくIBN5100を探しているという編プロの桐生萌郁との出会い。ラボの1階のブラウン管専門店にバイトに入った少女、阿万音鈴羽。神社の男の娘、漆原るか。メイクイーンのメイド・フェイリスこと秋葉留未穂。
 情報統制する気のないラボメンの緩さにより拡散していく情報と、繰り返される過去メールの実験により、少しずつ世界線にずれが生じていく。そしてただ一人、岡部はそのズレを認識することが出来る。

 試行錯誤により、メールだけでなく記憶を転送するタイムリープ法を確立した時、未来ガジェット研究所にカタルシスが訪れる。果たしてこの危機を無かったことにすることはできるのか?その物語は次巻にて紡がれる。

 過去に話題になったネタを織り交ぜながら繰り広げられる、サスペンス風タイムリープの物語。どこまでが計画された出来事で、どこまでが偶然なのか。何がきっかけとなって現在が変化しているのか。ふわふわと足元が定まらないような不安定感を楽しめると思います。

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海羽超史郎作品の書評