シチリアの男を象徴するジャケット

 ここのところ、ジラソーレ関係で織部悠が女の子に囲まれている展開が多かったので、全く違った設定でビックリした。ユウがナポリにサルトを開いたばかりの頃、シチリア・マフィアのゴッドマザーからの依頼で仕立てたツイードのジャケットにまつわるストーリーだった。

 先代ドン・トトの死後、その長男の遺児ピエルを後継に立てることは遺言で決まっているものの、本人にやる気がなく、次男のバルトロメオの子でシチリアから追放されたファウストが乗っ取りを企てる。
 そんな状況の中で、何とかピエルに貫禄をつけるため、先代がマリオ親方に仕立ててもらったジャケットを再現するのがユウの仕事だ。しかし現物もなく仕事が難航する中、シチリアは緊張の度合いを高めていく。

 一着のジャケットを象徴として、シチリアのゴッドファザーとして慕われた先代の威令の強力さが描かれる。その権威を引き継ぐための切っ掛けとなる仕事をユウは成し遂げることが出来るのか?
 たまには渋いお話も締まって良い。

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大河原遁作品の書評