幽霊に恋する少年

 薩摩八平は中二の部活帰りに香月という美少女幽霊と出会い、一目ぼれしてしまう。その結果かどうか分からないが、浮遊霊だったはずの香月は八平に憑りついた形となり、彼から20メートル以上離れられない体になってしまう。
 そしてもう一つ、八平に訪れたのはラブコメ現象と名付けた日次イベント。毎日何かしら、女の子と手が触れ合ったり、胸に触ったり、スカートに頭を突っ込んでしまうという様な、いわゆるラブコメイベントが発生する体質になってしまったのだ。

 ラブコメ作品なら最終的に許されるが、現実でそんなことをやってしまえば社会的に抹殺されかねない。強制ラブコメイベントに少しでも対抗すべく体を鍛え、もし間違いが起こっても許してもらえる様に女の子の好感度を上げる努力を続けていた。
 そのせいかは分からないが、高校入学直後から、クラスメイトの染谷佳乃からは過剰に慕われるし、生徒会長の北見鈴音には気に入られるし、義姉の霧子にはストーカーばりにまとわりつかれるし、うらやましくも困った状況に。何より、八平は香月が大好きなので、彼女を放置して他の女の子と遊んでいるわけにはいかない。

 だが、香月は香月で、八平が幽霊である自分に義理立てするより、生身の女の子と付き合った方が良いと思い、寂しさを振り切って身を隠す決意をするのだった。

 会話のテンポが良く、ヒロインたちのボケに突っ込む主人公のやり取りが面白い。単純なラブコメと思わせておいて、しんみりとした雰囲気も作ったり、主人公の格好よさを際立たせるイベントを作ったり、何より幽霊のヒロインの切なさを描いたり、ストーリーの幅広さがある。
 べたなラブコメディと言われればそれまでだけれど、深みを持った笑いを作り上げるセンスがあるという印象を受けた。

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壱日千次作品の書評