方向性の異なる自暴自棄ふたり

 貴樹和貴は突然、隣人の田辺川涙から秘密を明かされる。それは魔法少女の国家資格があり、彼女はその仮免許であるということ。そして、彼にパートナーとなって欲しいということ。和貴は自分のルールに従ってその願いを受け入れ、夜の間だけ、彼の魂が本来求めうる形である、白銀の仔狼として生活することになる。
 そんな不思議な生活の二日目、同じくクラスメイトである水粂水萌に呼び出された和貴は、彼女のパートナーになることを申しつけられる。彼女も魔法少女仮免許らしい。既に涙のパートナーとなった和貴は当然のごとく断るのだが、水萌は彼の意思を無視して、自分のパートナーになるのが当然と言い切るのだった。

 千年に一人の魔力量を持ちながら制御訓練が嫌いという田辺川涙と、魔法使いのエリート一族にありながら魔力が少ないために疎外されて育った努力の天才、水粂水萌。才能があるものに復讐し、努力が認められる仕組みを作るという水萌は、そのための道具として必要な和貴をどうしても手に入れようとする。
 涙という人間の行動原理は最後まではっきりとはしないのだが、とにかく和貴に興味を持っていて、パートナーにして置きたいのは確か。和貴自身の意志と、自分が従うべきルールに従って初志を貫徹しようとするため、魔法少女仮免許の二人は対立してしまう。
 そんな対立を助長するように街に起きる不思議な現象。それを解決しようと双方が動く中で、和貴の行動によって、涙と水萌、二人の考え方が少しずつ変化していく。

 対立する二人を仲裁するでもなく傍観する指導教官、ベリエル先生や、そもそも魔法を取り囲む世界観も謎として残る。今回は魔法少女二人以外にほとんど登場の場がなかったので、次はサブキャラも含めて世界を広げて欲しい。
 あらゆることに比喩表現をつけて話したり、全く人の話を聞かずに取りあえず暴力をふるうという様なキャラクター付けには、若干のわざとらしさとくどさを感じるかもしれない。

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冬木冬樹作品の書評