一歩を踏み出すきっかけ

 結城佳帆は12歳の時に両親を亡くし、年の離れた妹・真奈と二人きりの家族で過ごしてきた。その妹は、中学の時にした不注意の結果がもたらした出来事のために、家の外に出なくなってしまった。姉は、そんな妹の目を外に向けようとして、自分が一目ぼれしたイケメン司書の話を持ち出す。

 舞原葵依は舞原私立図書館の館長を務めている。4年前に妻の舞原雪蛍が失踪してしまい、失意の中に引きこもったのを心配した一族が、彼を館長に推薦したのだ。結城佳帆は、千桜インシュアランスの同期である長嶺凜のお使いを頼まれた関係で、彼に出会う。
 図書館職員の楠木風夏や逢坂星乃叶の隠然たるサポートもあり、半ばストーカーまがいのこともしつつ、佳帆は葵依の自宅にたどり着き、話をするチャンスを得ることになる。

 「蒼空時雨」からは楠木風夏、「初恋彗星」からは舞原星乃叶、「永遠虹路」からは舞原七虹が再登場する所は、これまでのシリーズとは少し異なっている。だが、全体的な雰囲気と、構成の特徴は変わっていない。
 作者としてはこのシリーズを「花鳥風月」シリーズと呼んで欲しいそうなので、どういう雰囲気の恋愛小説かはイメージしていただけるだろう。全体を哀切な空気が覆っており、その中に最後まで貫き通す芯がある。そういった、雰囲気で読ませる作品だと思う。

 あとがきは真面目なんだけれど、少し笑ってしまった。

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綾崎隼作品の書評