生と死を分ける牙

 文明が廃れて大地は荒れ、荒野においては力のみが全てを支配するようになってしまった。そんな世界で家族を盗賊に殺されたソーナ・ユーキは、野たれ死にする寸前で、美しき武器行商人ガラミィに水を与えられる。
 復讐のために思い出を捨て武器を手に取ったソーナは、ガラミィに借りを返すため彼女と旅を続けることとなる。この世界の中でソーナがみる人間の姿とはどのようなものか?

 わずかに残る水や食料を求め、過去の文明が残した武器を手に取り戦争が繰り広げられる世界。強力な力を持つものの下では国ができ、為政者にとって都合のよいルールが一定の治安を維持させているものの、その影響範囲は狭く、その外には弱いものを虐げることで生き残る世界が広がっている。
 そんな世界において武器とは、向けられた者には死を、持つ者には生を勝ち取らせるものだ。そしてそれを運ぶ武器商人は、否応なく生と死の間を見ることとなる。
 復讐の刃を手に取ったソーナが見る世界は、彼が遭遇した不幸に劣らない不幸が支配する世界だ。そこには絶望が溢れている。それに浸ってしまい、暗い目をして生きることも一つの方法だ。だが、ソーナの目からはまだ希望の光は失われない。
 このまま希望を見通すことができるのか、あるいはどこかで道から転がり落ちてしまうのか。旅はまだ始まったばかりだ。

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七月鏡一作品の書評