運命測定機械はサイコロを振る

 御調和水の携帯端末で、突如、ライフ・マニピュレーターというアプリケーションが起動する。その画面に現れた黒のバニーガール、運命測定機械と名乗る彼女は、和水をプレイヤーと呼び、ゲームへの参加を促す。彼女の言うゲームとは、スポットと名付けられた人間の運命をサイコロを振ることで決定し、幾人かのプレイヤーと競った結果勝利すれば、そのスポットの象徴する運命が世界の運命となるらしい。
 和水に提示されたスポットは、幼いころにケンカ別れし最近再開した少女、向井歩美。彼女との仲直りのきっかけを求めて、和水はゲームに参加することにする。

 まるで双六のように、止まったマスで指示される運命を実現するために和水は行動を開始する。でもそれは上手くいくことばかりではなく、傍から見ればまるでストーカーの様でもあり、彼自身の気質が達成を妨げたり、彼を妨害するプレイヤーが現れたする。
 恐怖を象徴するポケットとそのプレイヤーの持田八十吉、博愛を象徴するポケットであり、和水の婚約者となったらしい三澄華江と従者の瀬場と出会い、彼らがゲームの示す運命に妄信していることを知り、そのことに違和感を抱いていくようになる。

 赤の9番【隷従】と共有する世界観でありながら、ゲームの運営方法が少し変化した設定となっている。そこに組み込まれた和水は、当初はゲームに沿ったクリアを目指しながらも、彼が守ろうとする歩美に降りかかる災難を経験していくにつけ、ゲームの枠を、運命測定機械やゲーム管理者の思惑を超えた所での調和を目指していくわけだ。
 ダイスを振るという偶然性を強調した舞台を作りながら、その偶然を実現するストーリー展開には主人公の努力を要求するというところに、何かちぐはぐした感じを受けてしまった。まるで後半の展開は後付けされたような。

 同じ様な結末を導くにしても、状況に流されきる部分、気持ちが切り替わる部分、新たなやり方を目指す部分をそれぞれ徹底的にやった方が、面白さと教訓ぽい部分が分かりやすくなった気がするのだが。ただそれをやるには、初めの主人公の心が強すぎるという気もする。

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相原あきら作品の書評