思うようにならない

 水明芸術大学付属高等学校の文化祭でゲリラ出展するゲーム「銀河猫にゃぼろん」の開発はギリギリまで引き延ばされ、開発に携わったさくら荘のメンバーはみんな寝不足状態。
 そちらのイベントは無事に終了し、気づいたら文化祭は最終日になっていた。

 文化祭の会場でゲーム作ろうぜ!の審査員だった藤沢和希と再会した神田空太は、学生時代の彼の努力を知り更にやる気を漲らせ、そして千石千尋と彼の当時の関係を知りモヤモヤした気分になる。
 一方、椎名ましろは念願の連載を勝ち取ったにもかかわらず、ときおりぼーっとしたり、とつぜん料理をすると言いだしたり、あの芸術家的な空気が薄れてきていた。

 三鷹仁が隠していた進学問題を知り、いつもに増した積極アプローチをする上井草美咲。漫画への純粋さが薄れているように見えるましろに、自分の努力が結果につながらない焦りと合わせて、イライラした気分を感じる空太。いろいろと見せつけながらも自分の気持ちをはっきり自覚する青山七海。
 同じさくら荘に暮らし、みんなでゲームを作り上げたりしながらも、各人の想いの全てが十分に満たされているわけではない。理想にめがけて突き進みながらも、ある者は誰かとの違いに悩み、ある者は突き放されて、現実と理想の乖離を突きつけられる。

 そこで挫折して立ち止まるのか、傷つきながらも諦めず進み続けるのか。そんな若さと葛藤の物語が描かれる。

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鴨志田一作品の書評