自分とは違う道を進む者

 事業の運転資金を傘下の消費者金融経由で住宅ローンとして目的外に融資し、焦げ付きそうになったら銀行が住宅を抵当に入れて追加融資、最終的には債務者を自殺させて団体信用生命保険で住宅ローンは弁済させ、追加融資分は抵当で回収するというローン詐欺をテーマにしている。他には、素人が手を出すチケットの偽造詐欺、医療法人詐欺を扱っている。
 結局のところ、詐欺は強い方が弱い方を騙す犯罪だ。ローン詐欺では融資してもらいたい債務者側は銀行の言いなりにならざるを得ないし、チケット詐欺ではどうしてもプレミアチケットを欲しいから怪しいのに信じてしまう。そういう心理的なサヤを抜くのが詐欺師という存在なのだろう。

 今回黒崎は、自分と同じ様な境遇に陥りながら、正面から銀行にぶつかって玉砕した女性を助ける。それは代償行為みたいなものに見える。自分とは違うまっとうな方法で対した人を助けることで、自分も救われた気分になる。しかし、その気持ちに反して、もう後戻りできないことを実感する結果になるのだ。

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黒丸作品の書評