メディアワークス文庫

遺伝子の枷、言葉の枷

「もしも親が子供の遺伝子を自由に加工できたら」というもしもがあった場合の、現代のお話であり、軸になるのは三人の少年少女とその親たちだ。 春野倫太郎は、親が望んだ才能を発現しなかったために、遺伝子操作をした会社に"返品"された過去を持つ。それを…

敗走からの転進

百歩必中の金票(ひょう)を手に天下取りを口にする若者、廉把。口先で兵士を丸め込み仲間として敵将を討ち取るべく行動するが、その怪物じみた力の前に屈し、仲間をすべて死なせてしまう。 それから8年後、廉把は、撞木を持ち歩き虚空に見えない鐘を撞くの…

レーンのない回転寿司

本をジャンル分けする理由なんて、司書さんが図書館で並べる順番に迷わない程度の意味しかないと思うけれど、この作品をジャンル分けするのはとても難しい気がする。 自主制作映画をつくる人たちの青春ものみたいな体裁を整えているけれど、ミステリーの様で…

燦々と照り注ぐ太陽の光、はじける果汁

高校生たちが祖父の遺志を継いで新品種の夏みかんを開発する。これを全国に広めるため、通販番組を活用するのだけれど、生産者の想いとバイヤーの想いが上手くかみ合わず、番組は大失敗に終わる。 収穫時期を目前に控える、売り先の当てもない夏みかん。全く…

死してなお残る想いのそれぞれ

「陰陽ノ京」のスピンオフ作品なので、慶滋保胤は最後の方でチラリと顔を見せる程度、伯家時継にいたっては名前が挙がるくらいのもの。本作の主人公は、保胤と同年の甥である賀茂光栄、そして陰陽生の住吉兼良である。 安倍吉平が佐伯貴年と夜釣りに行った帰…

演劇で真剣に生きる

借金300万円を抱え解散の危機を迎える小劇団「シアターフラッグ」。劇団を主宰する春川巧は、子供の頃からずっと世話になりっぱなしの兄である、春川司に借金を頼みに行く。司が出した借金の条件は、二年間のうちに劇団の収益のみで借金を返済すること。 声…

二重三重に煙に巻く

新創刊されたメディアワークス文庫。”電撃文庫で育った大人たちに贈る”という、ある意味あいまいなコピーに、うまいこと合わせて来たなあという感じがする。さすがに器用ですね。 だからと言うべきか、「神様のメモ帳」「さよならピアノソナタ」の様に、ちょ…