原作の雰囲気を残したまま、絶チルのオリジナル・ストーリーを展開

 コミックのノベライズ成否の基準が原作の雰囲気を壊さないことにあるならば、この作品は完璧な成功例だろう。キャラクターに独自色を加えることなく、そうでありながらも、ただマンガを文章化しただけでは得られない深みが加わっている。

 超度(レベル)7クラスの超能力者による予告テロ事件と、低レベル・エスパーの集団誘拐事件。全く関係ないように思われていた2つの事件が絡み合い、1本の道筋が見えてくる。
 中盤までは原作を壊さないようにという意識が強いのか、若干ぎこちない感じもするのだが、終盤に差し掛かると、原作の舞台装置を使った三雲岳斗自身の作品になっていく。
 小説化をして原作を別の視点から見ると、兵部少佐や蕾見管理官の老獪さが際立って感じられる。皆本二尉が彼らの思惑を超えて道を選ぶのは、相当に大変そう。

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三雲岳斗作品の書評