ゲームの経験をリアルに生かす

 超一流のギャルゲーマーであり、リアルを徹底的に否定する高校生である桂木桂馬が、ダメ悪魔エルシィの仕事である駆け魂狩りを手伝わされるお話。駆け魂というのは地獄から逃げ出した悪魔で、人間の心の隙間に潜んで力を蓄えるため、これを追い出すためには心の隙間を埋める必要がある。この方法はいくつかあるらしいのだが、桂馬はギャルゲーマーらしく、恋愛を使うのだ。
 今回の駆け魂の持主は、武道家春日楠。生き方の方向性が真逆の彼女に対して、桂馬はどう攻略するのか。そして、エルシィの友達ハクアの登場により、駆け魂の正体も明らかになります。巻末には楠のその後を、本体表紙にはPFPの説明を収録。

 極端なまでの指向性を持った桂馬の存在に敬意まで感じられる理由の一端は、巻頭に収録されているストーリーで現わされている。とにかく中途半端ではなく、突き抜けているのだ。ゲームの世界に対する凄まじいまでの愛は、分野が違う人から見ても、超一流と呼べるものだろう。
 エルシィの登場による強制イベントは、リアルとの接触を頑ななまでに拒否している桂馬を、否応なくリアルに向き合わせる。リアルイベントを攻略するため、桂馬がヒロイン達に向かって叫ぶ一言ひとことが、いずれボディブローのように桂馬に効いてくる時が来る気がする。

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若木民喜作品の書評