静かに始まるクーデター

 母親を生き返らせようとして自分たちの体を失った錬金術師の少年、エドワードとアルフォンスが、自分たちの体を取り戻すため、賢者の石を求めて旅に出る、というのが物語の始まりだったのだけれど、賢者の石の製法に関する秘密を知り、それと国軍の関わりを知り、という感じでドンドンと幅が広がってきた。ある程度、軍政府とかかわるために、エド国家錬金術師という資格を持っているが、実際に軍サイドのお話でメインになるのは、マスタング大佐。彼がカバーしているからこそ、エドたちが自由に動けるし、思うようにできるという面もある。

 そして21巻。約束の日の実行阻止に向けて、各陣営が動き出した。エドはウィンリーと再会後にホーエンハイムのもとへ。マルコーとスカーはイシュヴァールの民とともにセントラルへ。しかし、そのセントラルでは、アームストロング少将やマスタング大佐が暗躍するも、肝心の戦力である東方軍と北方軍はブラッドレイ大総統の監視下に置かれ、思うように動けない。一方、アルのもとにはプライドとグラトニーの魔手が迫る。緊迫する状況、息詰まる展開。一体どちらの読みが勝るのか。
 大戦力によるガチンコ内戦というよりも、権力中枢の早期掌握によるクーデターという方向に行きそうですが、約束の日を未然に防いだうえで、行動を正当化する大義名分をどのように組み立てるのかがカギになりそう。


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荒川弘作品の書評