ALL YOU NEED IS KILL (桜坂洋)

 数年前は、直木賞作家である桜庭一樹氏と一緒に紹介されることも多かった桜坂洋氏。もともと筆が遅いタイプなのかもしれないが、最近はあまり作品が出版されないこともあり、あまり表に出てこない印象がある。この作品は同氏の初期作品であり、代表作である「よく分かる現代魔法」よりもSF色の濃い作品である。

 なぜ始まったのかも良く分からない、人類と意思疎通ができない異世界生物との戦闘。戦術なんていう華麗なものがない消耗戦の中、戦場に叩き込まれる初年兵。ほとんど自滅に近い形であえなく戦死…と思いきや、目が覚めると再び出撃前の世界に戻っていた。
 はじめは重過ぎる出だしに少し躊躇したが、読み進むに従って、その物語に引き込まれていった。なぜ彼は、彼女は同じ日を繰り返しているのか。その答えと共に物語りは収束する。上下分冊として、もう少し書き込んでも良かったのではないか。それだけの深さのある作品だと思います。

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桜坂洋作品の書評