よくわかる現代魔法 (6)

 桜坂洋氏、お久しぶりの新作。なので、ちょっとストーリーを振り返ってみる。

 何のとりえもないと思っている森下こよみが魔法学校のチラシを見つけ、自分を買えるために入学してみようと思い立つ。向かった先の洋館には、姉原美鎖というお姉さんと弟の聡史郎が住んでいた。
 美鎖はコンピューターやネットワークを利用してコードを実行するという現代魔法の第一人者。彼女に弟子入りして現代魔法を勉強するこよみだが、現代魔法の言語であるアセンブラはちんぷんかんぷんだし、実行した魔法は全て、たらいを召喚する魔法に変わってしまう。
 自らの肉体のみで魔法を実行する古典魔法の使い手、一ノ瀬弓子クリスティーナや、こよみのクラスメイトでプログラミングが得意な坂崎嘉穂を交えて、現代魔法が関わる数々の事件に関わっていく、というようなお話。

 今回の事件は、5巻で描かれた事件の直後から始まる。
 美鎖のところに送られてきた大量の通販商品の中に、異常なコードを持った段ボール箱があった。開けて見ると中には携帯電話が一つ。液晶には卵の映像が映っていて、それが割れると、炎をまとったキツネ(Firefox)の姿をしたデーモンが現れた。こよみになついたそれ、プーが側にいると、こよみは普通に魔法が使える。喜んだこよみはプーをとてもかわいがるのだが、それが後々大きな事件につながっていく。

 事件の大きさの割にはページ量が若干少なめの気がする。美鎖は病み上がりで精彩を欠いているし、弓子の派手な立ち回りも少なめだし、嘉穂の見せ場も作ってもらえないしで、盛り上がる前に事件が終結した感じ。
 まあ、今後の展開を担いそうな怪しい男も登場するので、何かが起こる前の準備運動と思っておけば良いのかも。いままでは単発のプログラムの話だったけれど、これからはその集合体であるシステムの話に移っていくのかもしれない。

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桜坂洋作品の書評