昔の面影、目の前のあなた

 アパートの前でずぶ濡れになっていた所を助けた女性、譲原紗矢は何故か自分の部屋に居候することになってしまう。彼女がスーパーに職を見つけ、出会ってから1ヶ月後、ようやくアパートの前にいた理由が明かされるのだが…
 そして、同じ高校の演劇部だった女性、楠木風夏は無言電話と夫の行動から、浮気を疑ってしまう。その真相を突き止めるため、探偵事務所を開いている舞原零央に相談が来るのだが…

 登場人物たちの視点を順々に辿りながら、ひとつの大きな物語を紡いでいく作品。巧妙かどうかはよく分からないが、たくさんの伏線が張られる。メインの伏線については回収されるけれど、名前だけしか登場しない人物もたくさんいる。この辺は、今のままだと余分だと思うし、活かすならばもっとのめり込める様な設定を加えないといけない気がする。
 僕は友達が少ないからよく分からないけれど、社会人になってもこんなにきっちりしっかり学生時代の友人と絡めていけるのかなあ、と少し疑問にも思う。むしろ舞台が高校とか大学だったらしっくりと来るような緊密さがある。
 その頃があまりにきれいで純粋で、その呪縛から抜けられないだけ、では無かったことに未来への救いはあるかもしれない。

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綾崎隼作品の書評