いつもと違う面もあれば、同じ面もある

 人によってそれぞれ好みの程度はあれど、どのお話も面白く読めるのではないでしょうか。

 沢木耕太郎『マリーとメアリー』は、ブラッディ・マリーというカクテルを軸にしながら舞台を転々とさせるエッセイ。
 伊坂幸太郎『合コンの話』は、最初に二行あらすじを示しておいて、ストーリーの方向性と結末を明らかにしながら、その中で何が起こるのかとワクワクさせながら読ませる。
 近藤史恵レミング』は、自転車競技の中で勝利を義務づけられるリーダーと、リーダーの勝利のために自分を殺さなければならないアシストの関係を柱として、それぞれの心情が細やかに描かれている。
 有川浩『ヒトモドキ』は、核家族の中に割り込んできた親戚によって狂わされていく人生と、相容れないことが分かっているのに、人に近づかずにはいられない人間の弱さや負の面を描く。このシリーズでの物語は作者の経験が見えるような感じがして、いかにも小説的。
 米澤穂信『リカーシブル』は、親の喪失と少女期の引越しという事件下で感じる"世界の転換"みたいなものの恐ろしさを感じる。そしてそこで至る諦めみたいなもの。
 佐藤友哉『444のイッペン』は、ミステリーのトリックとしては普通だけれど、キャラクターたちの背景に興味がでる。他の作品が気になる感じ。
 本田孝好『日曜日のヤドカリ』は、日常の平凡さの中にも、大事件は起きうるということを教えてくれる。

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有川浩作品の書評