行動範囲が狭いけど

 キリエはある一つのことにしか興味がない。それは鍵を開けること。17歳になった今は街中の鍵を開けつくしてしまい、彼が開けられない鍵はない。ただ一つ、彼の家にある不思議な小箱を除いては。
 夏祭りの日、妹のミドリカに連れられて訪れたのは、町外れの丘に建つ監獄砦。廃墟と思われたそこには、キリエを魅了する錠が多く下ろされており、そして、その鍵を全て開けて着いた先にいたのは、大統領を名乗る美しい女性だった。
 彼女との出会いがキリエを時の彼方に忘れ去られた魔法、封緘術との出会いの始まり。

 鍵を開けまくる以外には何の興味もない美形少年という不思議な主人公が自分の望むとおり行動しながら、その結果引き起こされた事態を乗り越えることで少し周りにも目を向けられるようになっていく。
 非常に行動範囲が狭いので、情景的には大きな変化はないのだけれど、イラストの力もあって不思議と華やかなのだ。

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池田朝佳作品の書評