意外な父の姿

 クナム(長老)の子は必ず男子であり、千人目のクナムは世界の王となるべく生まれてくるということがザカリア女神とザカールとの契約。それなのに、王の親となる998番目のクナムの子は、なぜか女子だった。
 歴代のクナムと比較しても隔絶した力を幼少から示しながら、父であるクナムには認められず、女であることに苦悩するその子の名は、ラクリゼ。本編でカリエを助け導く傾城の美女の幼き日の姿だった。

 同年代の男子など相手にならない実力を持つのに、女であるがゆえに父に認められないことに苛立ち、荒んでいくラクリゼは、ボロボロになってザカールの村にたどり着いた一人の少年を周りの偏見から守るように父に言いつけられる。それがラクリゼとサルベーンのはじめての出会いだった。
 それから数年がたち、彼らに転機の時が訪れる。

 娘の扱いに戸惑い悩むラクリゼの父に人間らしさを感じたのが意外だった。本編で描かれるクナムの姿とは余りにもかけ離れているように感じたので。
 ザカール至上主義的な考え方を持っていたラクリゼが、外の世界に興味を持ち、波乱の人生に旅立つ過程が面白い。

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須賀しのぶ作品の書評