素直に応援しにくい

 自分には特別な力があると言い張って、髪を銀色にし、蒼緋のカラーコンタクトでオッドアイを演出し、意味深な言動をして、そのイタさを幼なじみ少女に罵倒される高校二年生、佐藤光一は、同じクラスのちびっ娘、間宮薫の尾行中に、敵に襲われる不思議なお姫さまアルルと「木漏れ日現象」と呼ばれる超常現象に遭遇する。
 異能力を授かった喜び勇んだのも束の間、あまりの能力のしょぼさにアルルを救う役には立たず、敵にボコボコにされた光一は、アルルを守護する集団シェードの一員だった間宮薫に救われる。その後ちょっとした行き違いから実力者と誤解され、シェードの一員となる光一は、木漏れ日現象とアルルに隠された秘密を知ることになる。

 設定的にはセカイ系の王道パターンでありながら、主人公は英雄とは真逆の位置にいる普通の人というところに特色があるかもしれない。だが、主人公本人は才能もそれほどなく、あまり努力というものをしないのだけれど、その周囲には頑張りやさんや努力家がいて彼女らに触発されるが急に立派になることはできないというのは、最近よく見られるパターンである気がする。
 個人的には主人公にはある種の格好良さを求めたいので、一見ダメダメそうであっても、どこかは突き抜けていて欲しい。その点、佐藤光一も突き抜けているといえば突き抜けているのだけれど、相当に他力本願で、努力らしい努力もあまりしないので、素直に応援しにくい気がしないでもない。

 最後の展開からみて、今後は学園ラブコメ風になりそう。周囲の人間は色々と面白いので、今回とは違った面白さが楽しめるようになるかもしれない。

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柳実冬貴作品の書評