周囲の声と自分の意思

 売上の落ち込み、担当編集の交代などで迷いが生じる矢文学のところに、純文学作家としての再デビューのチャンスが訪れる。
 同業者との交流の中で自分が何を書くべきか、ライトノベルとは何なのかという疑問を抱いてしまい、何を書きたいかも分からなくなっているときに、椎名明日葉が他の男と楽しそうに会話しているのを見て、ますます負の感情は増していく。そして、彼を2次元アレルギーにした姉の手によって、破局が訪れてしまう。

 本当はラノベを書きたくなかったはずなのに、編集者や友人や恋人や絵師や、そしてファンや、多くの人との交流の中で自分にとっても意味あるものとなったラノベが、今度はブンガクの選択肢を奪うものになってしまう。
 彼にとって大きな影響を与える人物たちの声に押しつぶされてその言いなりになってしまうのか、自分の主張を通しきるのか、それとも別の道を見つけ出すのか。その答えは結構難しい。

 今回が完結編ということで、題材とは少し違うところでハッピーエンドが訪れます。

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壱月龍一作品の書評