どうでも良いところと、どうでも良くないとこ

 横浜港の一角にある倉庫で、マウスは倉庫番をしている。とは言え、実際の管理はAIがやっているので、彼の仕事はAIの相手をするのみ。家に帰れば、マウスにべったりの姉が待っている。
 そんな毎日に紛れ込んできた異分子、佐治まことは、かつての恩師の娘だ。名門女子高に通う彼女は突然押しかけて来て嫁にしてくれという。たいそう不審で迷惑だ。高校時代に知り合い今も付き合いがあるミツルの助けを借りて彼女の真意を調べてもらったところ、彼女と寄宿舎が同室の少女、豊島美月の父親と、マウスに恨みのあるアマルに関係があることまでは分かった。
 そうこうしている内に、どうやら周囲がきな臭くなってくる。

 文体は短いセンテンスが積み重なっている感じで、全体的には相当荒っぽいのだけれど、それがテンポを生んでいるとも言える。内容的にもバイオレンスなところがあり、文章も含めて好みが分かれると思うのだが、背景に知識を感じるところもあって、意外に深みがある部分もある気がする。
 基本的には勢い重視、丸いよりもちょっと尖った感じの物語だと思う。

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大間九郎の書評