富士見ファンタジア文庫

騎士団内部のエピソード

蒼穹園騎士団の騎士の誇りがぶつかる大会、蒼穹園武会への参加を申し込まなかった鷹崎駆真。その理由はもちろん、在紗との団欒を守るため。しかし、騎士団上層部は彼女に申し込みをさせるため、あの手この手を駆使する。武会に込められた裏の目的とは何なの…

様々な世界観がカオスに混じりあう

空獣が高空を支配する世界。彼らがもたらす被害を防ぎ、彼らを資源として利用するため、蒼穹園騎士団は空獣を狩る。鷹崎駆真は17歳の女性でありながら、近接戦闘で圧倒的な実力を誇る騎士の一人だ。そんな彼女が何よりも尊重するもの、それは国でも騎士の…

崩れそうになる信頼関係

軍に壊された鉄大兎を助けるため、軍を出し抜こうと画策する紅月光たち生徒会メンバーたち。サイトヒメアはかつての自分の力を取り戻して大兎に接触しようとするのだが、その行動はこれまで二人が築き上げて来たはずの信頼関係を崩壊させてしまう要素を孕ん…

神さまはいないけど神のごとき力はある

100万人以上の死者が住む死者の国、オルタス。旅に出たアイたちが拾った少年キリコを送り届け、その恩により普段は許されぬ生者の入国が認められ滞在することになった街で、アイは多くの死者たち、そして、オルタスの姫ウッラに出会う。 何も考えていないよ…

収拾がつくのかというくらいの広がり方

表紙が表紙なので最終巻かと思ったのだけれど、もう一冊あるらしい。確かに、表紙を良く見ると、南雲慶一郎がいない。 肝心の物語はというと、ただでさえカオスになっていた大門高校の文化祭が、魔王降臨により、さらに断片化されたエピソードの連なりになり…

シェルティスを縛る二律背反

正護士になるためには候補生3人以上で部隊を組んで任務をこなすことが必要だが、候補生たちから敬遠されるシェルティスには、個人的な実力はあっても仲間を募ることが出来ない。前回の事件で仲間となったモニカと部隊を作ることになり、必要なメンバーはあ…

生徒会はじめて物語もあるよ

2年B組の修学旅行の様子を描いたり、過去の碧陽学園生徒会の出来事を描いたり、外伝ぽい物語と、新規読者をサポートするという名目で『生徒会の一存』シリーズのテーマを考察したり、杉崎と真冬の遊びなど、本編ぽい物語の両方がある。 本文中にある通り、…

変態学校の青春ギャグ成長物語

瀬木成道の祖父が理事長を務める聖☆ジューゾー学園は、変態の誉れ高き高校である。それほど評判が悪い学校ならばろくな生徒も集まらないと思われがちだが、評判が周辺地域にとどまることと、進学・就職率の高さから偏差値は高く、ハイスペックな生徒が集まる…

照れ屋な王様

俺様生徒会長の日常生活を描く、とは言え、あんまり学校にはじっとしていられない。東で美雷がトラブルを起こしたと聞けば心配して<道程>を開き、西で大兎がやらかしたと聞けば駆けつけて頭を蹴り飛ばす。それが紅月光の日常生活だ。 生徒会長、ミーツ、変…

過去と現在を根拠にした、恐ろしくも可愛らしい争い

貴族の屋敷に本を仕入れに行った帰り道に、ジグウォルと『万巻の書』レジィナは、二人の刺客に襲われる。襲ってきたのは、かつてジグウォルが学んだ星導師の下にいた、ソコートとデルミッシュ。 聖堂からの依頼だというその襲撃を振り切って落ち着いたと思っ…

大きくなればいつか分かるよ

十五年前のある日、神様は突然世界を捨てた。子供は産まれず、人は死ななくなった。人が死なないことにより生まれる混乱を収束するため、神様が使わしたのは墓守という、人の女性に似せたものたち。彼女たちの手にかかれば、人はようやく永遠の眠りにつくこ…

ピンチがチャンス

銀竜としての使命を果たすテオバルトだったが、悪魔たちの生みの親であるキャンディッドの計略により、その力の大半を奪われてしまう。速やかに取り戻さなければ自身の消滅を招く。アマポーラとの約束を守るため、キャンディッドを追跡するテオバルト。その…

モノではなく人として

ある島を支配する二つの王家のうち、一方が滅ぼされる。滅ぼされた方の王女を生け贄として、滅ぼした方の第二王子が自分と妹の生き残る道を守ろうとするのだが、一緒に旅をするうちに互いに情が移ってきて、という筋書きの物語。戦闘シーンなどはほとんどな…

巫女の孤独

護士候補生として天結宮に再入宮したシェルティスだが、彼がいない三年の間に護士の昇格制度も大きく変わっていた。突出した技量を持つ戦士の育成ではなく、集団戦力としての増強を重視する。ゆえに護士候補生は三人以上で部隊を作り、その評価により昇格す…

自由に本を読むために戦う

聖堂という中世の教会の様な国が教義の背く書物を焚く世界で、本好きで星導師という星の力を使う魔法使いの少年ジグウォルが、「万巻の書」という膨大な本を記録している精霊の少女レジィナと共に、「五賢七書」という星導術の本を求めて旅する物語。 同出版…

世界の理が否定したとしても、それだけでは諦められない

浮遊大陸オービエ・クレア。その下に広がるのは穢歌の庭と呼ばれる領域で、そこに住む幽幻種から大陸を守るため、氷結鏡界という結界が、皇妃と巫女たちによって張られている。 シェルティス・マグナ・イールという少年は、かつては氷結鏡界と巫女たちを守る…

剣から心へ:受け継がれるもの

『伝える』という行為は時間を超越するための一つの手段だと思う。かつて伝承や技術を後世に伝える主要な方法は口伝や徒弟制だったが、活版印刷が再発明されると、その役割は書籍に代わる。しかし、書籍は当初の内容を変質させることなく伝達させることが可…

哀しいけれど幸せなひと時

盟主アロマの復活がもたらす破滅の時。魔族に対する反抗組織を持つ国は侵攻を受け、支配体系は丸ごと乗っ取られてしまう。巷にあふれる使途と、生じる混乱。 その頃、レディ・キィとして運命を定められてしまったレイニーは、戦う意志を失い、過去の記憶に浸…

厳然たるルールが冷徹にも要求する対価

第14回ファンタジア長編小説大賞〈大賞〉受賞作である「12月のベロニカ」で眠れる少女とそれを護る騎士の姿を描いた作者による作品である。 魔族と呼ばれる、一千年前からこの世界に出現した、強力な力を持ち人間を捕食する知性体と、それらを撃滅しこの世界…