講談社

破局噴火の恐怖を実感できる

紀元79年、ヴェスヴィオ火山の大噴火により一夜にして滅んだ都市、ポンペイ。その被害の凄まじさと火山の恐ろしさは対岸の火事ではないということを教えてくれるのがこの作品だ。 宮崎県の霧島山に噴火の兆候が観測される。だがそれは、加久藤火山という霧島…

羽川翼の再生物語

阿良々木暦が不在の中、羽川翼は新たな怪異に出会う。それは巨大な虎の怪異だった。そこから起きる不審な火災。戦場ヶ原ひたぎや、阿良々木月火・火燐の助けを借りつつ、羽川が到る事態の真相とは? 物語の語り部は羽川翼であり、かつ、全く新しい怪異事件が…

答えがない問いを考え続けること

17歳の少女である葛羽紅葉は、実業家の母親の会社が起こした事件のせいで、マスコミから追い回される存在になってしまう。そんな状態の時に、でびる屋なる裏家業を営む謎の存在、シャーマン・シンプルハートと呼ばれる男と、その男が操っている不思議な人形…

頑張ってもなかなか報われないルシウス

EDになって妻に逃げられたルシウスが妻を連れ戻すために治療に臨んだり、ハドリアヌス帝が養子を迎えるにあたってお披露目に相応しいお風呂を設計したり、古い私営浴場を再生させるためのアイデアを実現したりする。 一番初めのお話については、ポンペイ遺…

一部はジャーナリストにも見習って欲しい力

コンサルタントというのは、クライアントの会社について無知だ。一般的な知識や他社事例などは知っているかも知れないが、クライアントの会社についてはその会社の人よりは詳しくは無い。しかし、この最初の段階から、その会社について最も詳しい社員と同等…

人生を賭けた本気の勝負

鷹崎ナツの試合結果を横目で見ながらも、丸尾栄一郎と荒谷の決勝戦は続く。第1セットは荒谷に取られたものの、左利きにも慣れ、チェンジオブペースも有効に機能し始めた第2セットは互角の攻防になる。 二人の人生を賭けた本気の勝負の結末はどうなるのか?…

自分が許すギリギリの範囲で

動くミノタウロス像の謎を解く「アリアドネの糸」、クラスメイトと出かけた釣り先で遭遇する事件を描く「魚釣り」、榊森羅の養父の一人スタン博士が登場する「スタン」、大富豪が過去に友人から贈られたキルトに込められた謎を解く「キルト」を収録している…

積み重ねてきた末の崩壊

警察のプロファイリング研修所で起きた殺人事件の真相を描く「殺人講義」、アニメの制作現場で起きたトラブルの真相を描く「アニマ」を収録している。どちらの作品にも、過去からの積み重ねとその崩壊というテーマがある印象を受けた。 殺人講義で語られるプ…

古代ローマ人と日本人の共通点?

紀元二世紀のローマの風呂設計技師が現代にやってきて日本の風呂を学んで帰り、それを模倣して栄達していくというのをシリアスギャグ風に描いている。 個人的にはハドリアヌス帝の治世なのがツボ。ティベリウス帝と同様に、偉大な先帝の後を継ぐという重圧に…

警察の権力闘争

地方都市で連続して起きる動物切りつけ事件。かつての大物警察官僚、最上倉太郎が関わっていると告げる現役警察官僚にして音宮美夜の飼い主でもある矢萩の指示に従って、事件現場へと入る美夜。電車内での痴漢犯を通じて出会い、妙に彼女に懐いてくる高校生…

大島浩とリッベントロップの関係

ドイツと日本の歴史資料を閲覧した際に、前者は和戦の決断ポイントが明確であるにも拘らず、後者ではいつの間にか状態が悪化しているという印象を著者が受けたことをきっかけに、どうして日米開戦に到ってしまったのかを調べてきたらしい。そしてその結果理…

近江神宮に連れてって

瑞沢高校かるた部のメンバーたちが高校選手権の都予選に挑む。去年は二年生たちが受けた洗礼を一年生たちが受ける中、チーム自体は順調に勝ち進んでいくのだが、思わぬ強敵が千早たちの前に立ちふさがる。 後半の主役は太一。努力に裏打ちされた実力は折り紙…

提示される二つの道

タイトルのバイラル・ループとは、ウィルスの様に爆発的に伝染していく連鎖のことらしい。ネットスケープ、ホットメール、イーベイ、ペイパル、フェイスブック、マイスペース、ビーボ、ユーチューブ、ニングなど、爆発的に成長した企業の創業時の出来事を取…

予想の斜め上を行く構成

13年ぶりの作者の新作漫画ということで、それだけでも買う理由になる。加えて、展開される物語が面白い。 何が起こったのか良くは覚えていないのだが、山田壮太は無人島に漂着していた。脱出のために船を作っていた時、もう一人の漂着者、衣舞瀬チカが現れる…

過去の常識は忘れ去られる

ライトノベルのジャンルで戦国時代の常識を背景にした作品をたまに書いている著者が、コミック乱に連載していたコラムをまとめ、書下ろしを加えたもの。 時代劇でよく取り上げられる忠臣蔵などに関するトリビアや、よく知られている戦国時代の合戦、例えば長…

一定の成果と未だ見出せぬ解決の糸口

一気に成長し、自分の足で歩けるようになったタロウザ。草食・肉食の区別なく、四足歩行動物の言葉が分かる彼は、命乞いをする動物をみんな助けようと奮闘する。そして、それをサポートする頼もしき動物の仲間たち。 そんなタロウザの縄張りにピンチが訪れる…

渡されるバトン

「完全なる世界」による旧オスティアにおける作戦が開始され、宮崎のどかの仲間の冒険者たちは消し去られてしまう。同じ頃、綾瀬夕映の仲間も同様の事態に陥っていた。 フェイトとの絶望的な戦いの中でも、最後の最後まで足掻き続けるラカンは、一体何を思う…

同じようだけど違う、つながっているようでつながっていない

自殺とは思えないような演出がなされた、自殺にしか見えない遺体が連続して発見される。そして、その死体の側にはギリシア文字を使ったメッセージが置かれていた。 この事件と並行して、西之園萌絵は父母が亡くなった飛行機事故に秘められた事実を知らされる…

雨宮の音楽

大舞台で自分の音楽をつかみ始めた雨宮。 多くの人はその演奏の変化を素直に喜ぶが、ただ一人、雨宮の父は演奏よりもコンクールの結果にとらわれてしまう。 bk1 amazon 一色まこと作品の書評

踏み込み方とタイミングのずれ

前半は暦と月火のトークが占める。八九寺や神原がいないので暦の受け皿になれるのが彼女くらいだったのだろう。そして中盤からようやく本題に入る。 本題は、羽川翼と阿良々木暦のゴールデンウィークの物語。忍はなぜミスド好きになったのかとか、羽川宅の驚…

プロを目指すものたちの対決

神奈川県ジュニアテニス大会決勝戦、荒谷と栄一郎の対決が始まる。前回対戦した時の欠点を潰してきた荒谷は、エーちゃんが左利きに慣れていない事もあり、理論に基づいた本能を重視したプレイスタイルも通用しない。原点に戻って、考えてコントロールするテ…

権力が作る正義の姿

幻の蝶と20世紀のアルゼンチンの闇をつなぐ「ワールド・エンド」、日常の行き違いの原因を探る「すごろく」、司法浪人生が覗く愛憎劇「花屋の娘」を収録。2本目、3本目はどちらかというとQ.E.D.で扱いそうなテーマという気もするので、1本目が個人的には好き…

遺したいという想い

自殺に見せかけて殺された理論物理学者と容疑者として疑われる若手研究者を描く「黒金亭殺人事件」、大富豪の後継者選定を任された燈馬と後継候補四兄妹の行動を語る「Q&A」を収録。 前者はアカハラ的な話題をベースにしているのだが、類似したような話は…

翔太たちの舞台は世界に

最後は少し駆け足になっての完結編。翔太たちの舞台は世界に移った。 おまけとして、大和やハルの恋愛ストーリーも収録されている。 bk1 amazon 咲香里作品の書評

一人前になるには

社会問題を絡めながら、ルビーマスター・ヒロミとエメラルドマスター・エスメラルダの人格的成長を促すストーリーになっている。そして、ジュエルマスター・流崎レイカも子供扱いする実力の持ち主であるサファイアマスター、サエコ・ミレイが登場する。 生活…

パートナーたちの活躍開始

オスティア崩壊、ナギとアリカの別れ、そして…という過去編も終わり、過去から続く因縁との最終決戦の火ぶたが切って落とされる。しかしネギは闇の魔法の後遺症で不調気味。その穴を埋めるように、彼の仮契約者たちが活躍する。 色々と仕込んであった小ネタ…

千秋にバトンを渡す

のだめ初期の雰囲気を持ったオペラ編。番外編というけれど、もはや本編の続編という方が良いのではないかと思う。パリ編は、最初の頃こそ千秋のデビューにスポットが当たっていたけれど、最後にはのだめ世界に羽ばたくがテーマになって千秋はサポートに回り…

しのぎを削る

丸尾栄一郎プロへの道の最初の関門である神奈川県ジュニアテニス大会が開幕する。順調に1回戦を突破したエーちゃんの前に立ちふさがるのは、第3シードの宮川だ。徹底的に自分のテニスを磨き上げてきた宮川に、昨年のデータは、エーちゃんの新しいテニスは…

境界外における価値観

事件は山吹たちが実験をしていた研究所で起きる。4人の銃殺死体。死体は歯を抜かれている。そして、システム的に監視された環境下での密室である。 このシリーズで一番『すべてがFになる』との関連性が意識されているように感じた。もちろん全く異なる部分…

踊るのか、踊らされるのか

ケヴィンのストーリーが続いていたことが分かって一安心。戦国時代の伊賀の里に話が飛んでびっくりしたけれど、一貫したつながりがあったらしい。 巻物を巡る争いは決着。さて次はどこへ? bk1 amazon 浦沢直樹作品の書評